8月28日(金)18時にUTMB(モンブラン・ウルトライライル)参加者2500名がそれぞれの思いを胸にスタートラインを走り出して行きました。
総距離170km、総標高差10,000m。
通常のトレッキングで10日ほどはかかるところを速い者は20時間ほどで、平均では40時間ほどで戻ってきます。
スタート前、市役所前広場には競技者がこちらまで伝わって来るくらいの緊張した面持ちで待機していました。
表彰台を狙う者、自己最高記録を狙う者もいれば、この地点に立てるだけで最高の幸せだと感じている人達も少なからずいたことでしょう。
そんな彼らの姿を一目でも見ようと、声援を送ろうと詰めかけた人の数は知れず、、、。
スタート地点の市役所近くはもとより、町の外れまで(写真下中央)こんなにも多くの人達で沿道が埋め尽くされていた事にびっくりしました。
やはり年々その注目度、人気が上がっているのですね。
私はスタート地点から1km程行った少し人気が引けた所の沿道で声援を送る事に。
カウベルの音(牛の首につける大きな鈴)や声援、そしてヘリコプターの音が少しづつ大きくなってきたと思ったらあっという間に先頭集団が近づいてきました。
1km程の地点で既に先頭集団と後続集団の距離が結構出来ているのですよね。
2500名もの者がスタートのゲートを通過するはそう容易ではなかったはず。列の後ろの方はスタート時、恐らく前に進むことすら出来なかったでしょうから当たり前かもしれませんが。
日本の皆さん、私の「頑張って〜!!」という掛け声に笑顔で答えてくれました。
「行ってらっしゃ!!」に「行ってきま~す!!」という返事。嬉しいですね。
これからの厳しい旅路の事を思うと、皆さん無事に戻って来てくださいねと心から思わずにいられませんでした。
今年は中国や香港から参加された方がかなり多かったように思います。
アジアの同胞、こちらも皆さん手を振りながら応援に答えてくれて嬉しかったですね。
そして2015年度のUTMB優勝者はこのフランスはジュラ地方出身、24歳のXavier Thévenard ザヴィエー・テヴェナー。
前年は怪我で不参加した為、今大会はアウトサイダー的な存在だったのですが、見事に頂点を極めました。
とは言え、彼のキャリアは見事なもの。
2011年にCCCで初参加初優勝を遂げると2013年にはUTMBで、そして2014年にはTDSでそれぞれやはり初参加初優勝を飾り、このモンブラントライルの100km以上の3大レースの全てを制した唯一の者として知られています。
つまり世界的なトライルレースで優勝することなく参加したレースはない、という強者なのです。
女子の優勝者もフランスのNathalie Mauclair ナタリー・モウクレー。
アベック優勝に地元フランス人は大喜び。
今年は大会開催中は雲一つない全くの快晴の日が続き、暑さも半端ではなく、そんな中でのレースは過去に多かった悪天候(雨、風、雪そして寒さ)とはまた違った厳しさがあったかと思います。
UTMBの参加者数2563名(うち女性223名=8,7%)のうちゴールに辿り着く事が出来たのは1631名(63,64%)のみ(うち女性132名=59,19%)という数字がそれを良く表しているのではないでしょうか。
完走者のみ受け取れるベストを誇らしげに身に着けているのも姿を良く見かけますがこういう結果を見るとうなずけますね。
以下、順に
CCC男子優勝 Zach MILLER、CCC男子1・2・3位、CCC女子優勝 Ruth Charlotte CROFT、OCC男子優勝 Marc PINSACH RUBIROLA、OCC男子1~5位、OCC女子優勝 Celia CHIRON、OCC女子1~3位、TDS男子優勝 Paul BARTOLO、TDS男子1~4位
UTMB 男子歴代成績 |
||||
年 | 名前 | 国籍 | 時間 | 特記 |
---|---|---|---|---|
2015 | Xavier Thévenard | フランス | 21時間09分15 | |
2014 | François D'Haene | フランス | 20時間11分44 | 大会新記録 |
2013 | Xavier Thévenard | フランス | 20時間34分57 | |
2012 | François D'Haene | フランス | 10時間32分36 | 悪天候の為、総距離が103kmに短縮される |
2011 | Kílian Jornet | スペイン | 20時間36分43 | 土砂崩れを避ける為、総距離が170kmに延長される |
2010 | Jez Bragg | イギリス | 10時間30分37 | 悪天候の為、総距離88km |
2009 | Kílian Jornet | スペイン | 21時間33分18 | |
2008 | Kílian Jornet | スペイン | 20時間56分59 | 最年少優勝記録(1987年10月27日生、20歳) |
2007 | Marco Olmo | イタリア | 21時間31分58 | 最年長優勝記録(1948年10月8日生、58歳) |
2006 | Marco Olmo | イタリア | 21時間06分06 | 総距離158km |
2005 | Christophe Jaquerod | スイス | 21時間11分07 | |
2004 | Vincent Delebarre | フランス | 21時間06分18 | 総距離155km |
2003 | Dawa Sherpa | ネパール |
20時間05分58 |
総距離153km |
UTMB 女子歴代成績 |
||||
年 | 名前 | 国籍 | 時間 | 特記 |
2015 | Nathalie Mauclair | フランス | 25時間15分33 | |
2014 | Rory Bosio | アメリカ | 23時間20分20 | |
2013 | Rory Bosio | アメリカ | 22時間37分26 | 大会新記録 |
2012 | Elisabeth Hawker | イギリス | 12時間32分13 | 悪天候の為、総距離が103kmに短縮される |
2011 | Elisabeth Hawker | イギリス | 25時間02分 | 土砂崩れを避ける為、総距離が170kmに延長される |
2010 | Elisabeth Hawker | イギリス | 11時間07分30 | 悪天候の為、総距離88km |
2009 | Krissy Moehl | アメリカ | 24時間56分01 | |
2008 | Elisabeth Hawker | イギリス | 24時間56分01 | |
2007 | Nikki Kimball | アメリカ | 25時間23分45 | |
2006 | Karine Herry | フランス | 25時間22分20 | |
2005 | Elisabeth Hawker | イギリス | 26時間53分51 | |
2004 | Colette Borcard | スイス | 26時間53分51 | |
2003 | Krissy Moehl | アメリカ | 29時間38分24 |
ところで、
『 2010年は悪天候の為、スタートから数時間でレースが中止となった。
大会主催者側の、ますます悪くなる天候の下競技者を危険な状態にとどめておくことは出来ないという配慮からだったのだが、競技者の失望は多大なもので、コースとなる市町村や、ボランティアの協力の下結局翌日総距離を88kmに短縮して競技が再開される。
TDS(こちらは完全中止となる)参加予定であった588名の競技者を含めた計1238名が翌日にスタートを切った。』
これこれ、丁度ボランティアをしていた年だったので良く覚えています。
UTMBのレース当日、最終参加登録の係りをしていたのですけれども朝からの大雨、まさに暴風雨。
あちらこちらで土砂崩れも発生し始め、ボランティア、レース参加予定者も皆、果たして競技は行われるのだろうかと懐疑していました。
が、レース開始近くになり若干雨脚も緩まったので主催者側は予定通り(レース開始時間に若干の変更があったかと思います)レースを行うという決断を下したのです。
そしてレースは開始されたのですが、トップ選手がコンタミンの町(シャモニーから距離にして31km程、一旦谷を下り、再び上り始めた所にある町)に到着した時点で、あまりの悪コンディション(農霧と防風、2500m地点までの降雪)でレースを中止せざるを得なくなってしまいました。
実際には悪天候はもちろんの事ながら、峠の一部で6kmに渡り標識が何者かによって故意に取り外されていたことが判明(当日の21時まで主催者側が知らなかったという落ち度もあり)。
標識の再設置を試みた主催者側なのですが、悪天候の為ヘリコプターで容易に近づくことが出来ず断念せざるを得なかった、、、という事情もあったようなのです。
結局、誰がそして何の為に故意に取り除いたのかはそれ以降も判明することはなかったそうですが(レースを故意に中止させる為だったのか、山の危険性を訴えるデモンストレーションであったのか)。
コンタミン、或はその前の補給地点サン・ジェルヴェに辿り着いた競技者はそこでレース中止の報告を受けるのですが、失望と怒りの色を隠せなかったのは言うまでもありません。
抗議にあたる人が後を絶たず、結局前述の通り、翌日総距離を短縮してレースを再開することになったのです。
競技者のその日の宿、シャモニーまでの帰還手段の手配など、現場ではかなりの混乱があったようです。
そして、翌日朝の5時になって初めてCCCと同コースでレースを再開する事を決定。
但し、情報発信から5時間後の朝の10時にはイタリアのクールマイヤーからスタートするという強行。
いくらシャモニーからシャトルバスを臨時に走らせるとは言っても、この5時間弱の間に、正確な情報を得て準備をし、シャトルバスの席を確保し、イタリアまで渡りスタート地点に立つ、、、、というのはなかなか厳しいもの。
この時点でレースを泣く泣くあきらめた人も数多かったようです。
中には本当に号泣していた人もいたそうで。それもそうですよね、この1年間の(或はそれ以上の)苦労、下積みが自分の落ち度ではなく無になってしまったのですから。
遠方よりやって来た為予定の変更が出来なかったり(特に日本を含めたアジアからの人達)、キリアン・ジョルネの様に次の予定を控えている人、、、などなど同じくレースに参加出来ずに帰られた人もかなりいたようです。
この主催者側の対応(見落とし、判断ミス、オーガニゼーションの無さ)にはもちろんメディアからも含め、批判の声が多数上がりました。
そんな訳で、UTMBの規約は以降かなり事細かくなってきているようですね。
次の「ボランティア」のブログでも触れたいとは思っていますが、参加希望、参加される方は規約を熟知される様にして下さい。
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