シャモニーに戻って来てやりたかった事の一つがこれ。
UTMBでのボランティア。
仕事の合間の短期間、短時間とはいえとても良い経験の出来た以前の記憶から、今年も募集が始まると同時に早速ネットで登録しました。
そして回って来たのがこちら、競技者の「最初の窓口」となる所。
ボランティア登録時に、可能期間、時間、希望地、そして希望ポジション等を埋める様になっているのですが、私の場合シャモニーのみ、そして特殊な技能(医療関係、マッサージ等)もない代わりにフランス語に、もちろん日本語、そして一応は英語も少しばかりは話せるので毎回こちらでお世話になっています。
レース中のエイド(休憩所)でのボランティアはぜひやってみたいところなのですけれども、残念ながら運転が出来ないもので不可。
シャモニーに着いた競技者は、まずレースごとに指定された日時にこちらの会場(スポーツセンター)にやって来きます。
選手はこのスポーツセンター内に設置されたブースを廻り
① 最終登録、規約書へのサイン・提出
② 携帯品の確認
③ ゼッケンの受け取り
④ チップ(チェックポイントで通過を確認する為の集積回路)の入ったブレスレットの装着(ゴール後にこれと引き換えに保証金20Eを返金して貰える)
⑤ 参加賞のTシャツなどの入ったバックの受け取り
などを行っていきます。
ボランティア初年度、2010年に担当したのはこの最初のブース「最終登録、規約書へのサイン・提出」。
① 選手の名前、或いはゼッケンナンバーを聞き、パソコンに打ち込む
② パスポートなどのアイデンティテイーカードで顔、名前などを照合。
③ 保証金の20€を貰い、規約書をプリントアウトし、それをしっかり読んでもらってからサインを促し、次のブースに向かってもらう
という仕事。
今回担当したのは2011年同様「携帯品確認」のブース。
競技者は「レース時の必需品(以下の表参考)」の全てを持ってこちらにやって来、規定に反していないかチェックしてもらわなければいけません。
もちろん一人一人全ての所持品を確認していたらきりがありません(それでなくても既に長蛇の列が出来ているのですから)。
コンピューターで無作為に選出された4~5項目 / 人を必ず目の前に出してもらい、チェックし、確認しなかった品目も必ずレース時には所持するよう念を押してから誓約書にサインをしてもらい、次のブースへと進んで行ってもらいます。
競技者の方々にとっては最後の難関と言っても良いでしょうか。皆さん緊張した面持ちでやって来ます。
それもそうです、ここを通過できなければレースに参加できないのですから。
担当する方も大変な神経を使います。
こちらのコントロールは通過したのにレース中のチェックポイントで不適合となり、競技者がペナルティーを負う、或いは失格という事態になってしまったら申し訳ないでは済まされないので。
このモンブラン・ウルトラトライルは大変難しいレース。
コースの厳しさもさることながら2000m級の山々を次々と超えて行かなければいけないので、ありとあらゆる天候に対処できなければいけません。
過去数年は冷温、降雪、暴風雨に悩まされ、数多くのリタイヤ者を出してきた為、他のレースと比べて必需品に関しても事細かに基準が設けられていて必ずそれを守らなければレースに出場できません。
*「ベスト」は必ず誰もがコントロールを受けなければいけないので注意して下さい。
それには必ず全ての縫い目がシームテープで補強されていなければいけないという厳しい規定があります。
(但し、今回はかなりの暑さが予想さる天候だったので、UTNB以外に関しては多めに見ていました)
どんなに高級なベスト、トライル用に特別に作られたベストであったとしても、そして高級なベストであるが為に、逆に極限まで軽量化を図る為、必要最低限の場所にしかシームテープが貼られていない事もあります。
「このトライルの為にわざわざ・・・(某高級メーカー / 「craft」 は要注意です )のトライル専用のベストを買ったのに(200€近くはするらしい)!!」
「他のトライルでは何も言われなかったのにどうして!!」
「このベストで過去このトライルを走れたのに、どうして!?」
という方々、、、いらっしゃいました。
しぶしぶと他のベストを探しに出て行き戻ってきた方もいましたが、数名はそのまま戻ってくる事もありませんでした。
確かに高い登録費を払った上に、さらにベスト(シャモニーで見つけるにはそれ相応の金額を出さないといけない)を新たに購入しなければいけない、となったらやってもいられないと思う人もいることでしょう。
皆さん、このUTMBに関しては特にベスト選びには気を付けて下さい。
高いからと言って基準にあっているかどうかも分からないので。そして、決してコントロールでは規定を見逃してはくれませんので。
こちらで万が一情状酌量となったとしても(そんな事はありませんが)、山の上のコントロールでは必ずひっかかり、即失格となってしまいますので。
以下、参加規程。
- 各々レース参加者は義務とされる携帯品をレースの最後まで所持していなければいけない。
- ゼッケン受理の際に点検を受けたリュックはレース中に交換してはならない。レース中のいかなる時でも大会審判員からリュックや携帯品のチェックを受ける可能性あり。最悪の場合にはレースからの退場も余儀なくされる。
- 休憩地点にて必ず必要最低限の水や食料を確保すること。
- UTMB、CCC、TDSでは幾つかの休憩所(エイド)で30L以内のリュックを所持した者一人のサポートを受けることができる。専門的なアシスタント(コーチやメディカルスタッフなど)は認められない。
- 登録されていない人物のエイド部門以外での伴走はコースの一部分であったとしても認められない。
必需品(但し、以下は必要最低限)
* 軽量を重視て衣類を選ぶより、高山用の防寒、防風、防水性の強いものを選ぶようにした方が良い。
UTMB |
OCC | |
3か国で利用可能な携帯電話をレース中は常時電源をつけておくようにする。
バッテリーはスタート時には必ず充電してある。
運営本部のセキュリティーナンバーを必ず入れておくようにし、自分の電話番号「公開」にしておく。 |
必 | |
15clの個人用カップ(パックでも可)一つ |
必 | |
最低1リットルの補給水 | 必 | |
交換電池を伴う使用可能なランプ | 2 | 1 |
最低1.40m×2mのサバイバル(防寒・保温)シート | 必 | |
笛 | 必 | |
包帯やストラッピングの替わりとなり得る粘着性伸縮バンド(最低100㎝×6㎝) |
必 | |
予備食料 | 必 | |
悪天候にも耐えうる必ずフードの付いたGore-Tex系=防水透湿性素材(水蒸気は通すが雨や風は通さない)のベスト。
外からの水をカットする耐水圧が10,000mm以上(大雨用)の物が好ましい。 *耐水圧10000mmというのは、ウェア生地の上に1cm四方の柱を立て、柱の中に水を入れて10メートル(10,000mm)までの高さに入れた水の水圧に耐えられるということ。
2,000mm: 中雨 、300mm: 小雨、ちなみに傘の耐水圧というのは、250mm程度だそう。 |
必 | |
ズボンやくるぶしまでの長さのランニングタイツ、或いはランニングタイツとソックスを合わせて足が全部隠れるようになるもの。 | 必 | |
キャプ、あるいはバンダナ、Buff | 必 | |
最低180g以上の温かい上着(長袖で綿以外)、或いは110g以上のそれと撥水性素材のウィンドブレカーを合わせたもの。 | 必 | 悪天候時には推奨 |
縁なし帽 | ||
厚手の防水性手袋 | ||
防水性のオーバーパンツ |
*ベストは必ずフード付きか、生産元によって予め用意された付着可能なフードのあるベストであること。
*ベストの全ての縫い目は必ずしっかりとシームテープで補強されていなければならない。
レインウェアは生地がどれだけ完全防水だったとしても、実際には完全に水の進入を防ぐことは不可能。
雨はあらゆる所から身体に流れ込んできます。
そのなかで少しでも水の浸入を防げるかどうかはこれらのパーツの作りの善し悪しにかかっています。
シームテープとは衣服の縫い目からの浸水を防ぐために、裏側に貼り付けられたテープで、
きちんと作られていない雨具にはこれが無い場合があります。
高品質なレインウェアではこのシームテープが必要最小限の幅に設置され、極限まで軽量化が図られていたりします。
*ベストは必ず撥水性素材でなければならないが、通気の為に背中や両脇に一部メッシュが利用されているのは可能。
*ウィンドブレカーは携帯義務の「フード付きベスト」には当たらない。
ペナルティー或は失格
条件 |
ペナティー/失格 |
コースの大幅な短縮 |
ペナルティー 1時間 |
コースの単純な短縮 |
ペナルティー 15分 |
携帯義務品の欠如(最低1リットルの補給水、フード付き撥水性素材のベスト、全てのランプ、サバイバルシート、携帯電話) | 即時失格 |
その他の携帯品義務品の欠如(ランニングタイツ或はズボン、ランプ一つ、キャップ或はバンダナ、帽子、厚手の防水性手袋、長袖の温かい上着、防水性のオーバーパンツ、笛、粘着性伸縮バンド、予備食料、携帯カップ)
|
ペナルティー 1時間 |
携帯品コントロールの拒否 | 失格 |
故意のゴミ捨て(走者のみならずそのメンバーも含む) |
ペナルティー 1時間 |
他者(他走者、主催者)へのリスペクトの欠如 |
ペナルティー 1時間 |
障害のある者を助けない |
ペナルティー 1時間 |
許可された場所以外でのサポート |
ペナルティー 1時間 |
エイド付近以外での伴走者 |
ペナルティー 1時間 |
いかさま(交通機関の利用、ゼッケンの共同利用 等) |
即時、永久 失格 |
ゼッケンが正しく着けられていない |
ペナルティー 15分 |
正しいゼッケンが着けられていない |
ペナルティー 15分 |
危険な行為(プロテクトされていないスティックのとがった先を他の走者や観客に向ける、など) |
ペナルティー 15分 |
電子チップ(ゼッケンにつけられている)の欠如 | 審判の判断による |
コントロールポイントの未通過 | 審判の判断による |
大会主催者や、関係者、エイド責任者、医療、救援関係者の指示に従う事を拒んだ場合 | 失格 |
ドーピング検査の拒否 | ドーピング時と同じ |
制限時間を超えてからのポイントの通過 | 失格 |
マークの無いリュック |
ペナルティー 1時間 |
レース開始時に持っていなかったステックの使用 |
ペナルティー 1時間 |
ペナルティーは即座に実行され、その間走者は競技を中断しなければいけない。
(写真は過去の物ですが)
向こうでは競技者がチップを付けてもらっています。
そして、こちら手前のボックス、封筒の中にそれぞれのゼッケンが入っています。
金曜日の受付最終時間まで、ボランティアをしていたのですが、この封筒、結局最後まですべて無くなる事はありませんでした。少なくても30名分程は残っていたのではないでしょうか。
毎年の事らしいのですが、最後の最後の段階で都合がつかず来れなくなった人(病気、怪我などの理由もあるかと思います)がかなりの数いるようです。
その他、色々な場所でボランティアの方々が活躍しています。
トータルで2000名ほどはいるそうですが。
一日からでも参加できますので、興味のある方はぜひ。
違う角度から大会が見れ、きっと良い経験になるはずです。
そして、今回の戦利品がこれ。
協賛が Colombia に替わってしまっていたのですね。
以前のThe North Face と比べると品質の落ちも含め、物足りなさは感じられたのですが、それでもたった2日間のボランティアで(もちろん1日だけであっても)こんな物をもらえるのですから文句を言ってはいけませんね。
サイトを色々と探っていたら以下のビデオを見つけました。
全く知りませんでしたね。
2分33秒辺りにちらりと私が写っています。
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