ガレットも2月に入ると店頭から姿を消し、今度は bugne ビューニュ にその主役の座が廻ってきます。
フランス版ドーナツと言ったところでしょうか。
水・小麦粉・ビール酵母のみで作られていた16世紀当初の物から現在はバターと卵も加えて作られるようになっています。
カトリック行事のうちの一つ、マルディ・グラ 「 肥沃な火曜日 」と関係のあるビューニュ。
マルディ・グラとはこの日からパック( 復活祭 )までの悔い改めの為40日間肉食を断つ生活を始める前の「食べ収めをする日」。
一般的にこの日にはクレープを食べる習慣があるのですが、このビューニュ、リヨンから始まり今ではディジョンやアルルの方まで広く食べられるようになっているようです。
今年のマルディ・グラは2月9日。
今年の、と書いたのはクリスマスや公現祭(1月6日)、聖燭祭(2月2日)などとは違いその年によって日にちが変わるから。
マルディ・グラは6回の日曜日を含む Pâques イースター の47日前となっています。とされているのですが、その Pâques ( キリスト復活祭 )が、毎年日にちが変わる移動祝日( 春分の日( 3月21日 )を過ぎた最初の満月の次の日曜日 )な為。
ところでマルディ・グラはシュロブ・チューズデー(告悔火曜日)、パンケーキ・ディなどとも呼ばれているようです。
パンケーキ・ディにはもちろんパンケーキ(クレープ)を食べるのですが、これは四旬節に入る前に卵を残さないよう生じた習慣であるとのこと。
また、「beignets de carnaval ビューニュ・ド・カーニバル カーニバルのフリッター」とも言われることもあるようですが、仮装をした子供たちが村々を廻り、玉子や砂糖、小麦粉をもらい歩き、そして午後の終わりのそれらで作ったクレープを食べる習慣もあるらしいです。
シュロブ・チューズデーの名は、かつて謝肉祭最終日すなわち灰の水曜日前日に、皆が告悔を行う習慣があったことに由来しているそうです。
ちなみにこのマルディ・グラまで、多くの場所で1週間くらいカーニバル(謝肉祭)が行われています。
カーニバルとは「断食の前に肉に別れを告げる宴」のこと。春の到来を喜ぶ祭りに由来しているという説もあるようですが。
いずれにせよ「断食」とは違い、喜びや制約のある生活からの解放を表すべく仮装したり好きなものを食べたり、或いは道端で踊ったり歌ったりする期間であるとのこと。
ヴェニスのエレガントなそれや、ダンケルクのお祭り騒ぎ、そしてリオのそれは有名ですね。
話は「ビューニュ」に戻りますが、お店によってやはりレシピが違うので色々な形、味に出会えます。
お菓子には目がない私の同僚曰く、シャモニーで一番美味しいのは Chez Richard のそれなのだそう。
まさに日本で見かけるドーナツを写真の様にひねった形にしたもので一つ 1 € 。
ボリューム満点、しっとりとした触感で粉砂糖の甘みの十分に効いています(写真左)。
私の勤務するAux petits gourmandsの はそれに比べるとサクサクした感じ(写真右イメージ)。100g(7~8個程)で 4 € 。
目玉が飛び出てしまうような金額ではないので( それもそうですよね、小麦粉の塊なのですから )色々試してみると自分の好きな味を発見できると思いますよ。
「肉を食べない」という慣習はほとんど無くなってしまったようですが(昔は「聖金曜日」や「灰の水曜日」には肉屋は閉まっていたそうです)、このビューニュを食べるという習慣だけは無くなりませんね。
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